硬化促進材の添加の影響
一般的には硬化時間の短縮の為に塩(NaCl)や二水石膏(石膏スラリー)の使用が知られています。
但し、これらの使用は場合によっては硬化促進が期待できないのみならず、石膏自体の諸物性に悪影響を与える可能性もでてきます。
(1)塩(NaCl)の使用
効果的に硬化促進するのは、硬化膨張が0.20%よりも大きな石膏に限られます。
低膨張の超硬石膏では、逆効果となり、硬化が遅延してしまいます。
これは元々、硬化膨張を抑制する様々な無機塩が予め含まれており、他の塩類による促進効果が期待できないためによるものです。そればかりか、硬化遅延を起因とする対印象模型面の荒れを起こしてしまう可能性があります。
(2)二水石膏(石膏スラリー/模型の削り粉)
効果的に硬化促進は作用しますが、結晶核の増加は著しく、硬化膨張は増加してしまいます。
これは石膏スラリーを結晶核として、微細な二水石膏の析出により硬化時間が短くなり、硬化膨張が増加する事によります。
つまり石膏スラリーの濃度粒子径等の不均一な要素によるもので、安定して同じ精度を必要とする場合には不向きな事となってしまいます。
スラリー添加による、硬化膨張/硬化時間の影響は、最も調整材の含有率の低い普通石膏に顕著に現れてきます。
硬石膏(ニュープラストーンII、左図)、
および同硬石膏に石膏スラリーを約1%添加して練和した石膏硬化体(右図)のSEM(走査型電子顕微鏡)像の比較(1000倍)。
右図では石膏スラリーを結晶核として微細な二水石膏の析出が見られ、空間が満たされている。
その結果、硬化時間は短くなり、硬化膨張は増大する。